2008
2008年のおわりに、愛ちゃんへ
- 2008-12-31 (水)
- 波のあわ
わたしがまだ小学生だったころ。
見るともなしについていたテレビの中に、髪の長い女の人が現れて、
突然後ろを向いたと思ったら、スカートをひょいと持ち上げてみせた。
Tバックだからおしりが丸見えで、そこには何か文字が書かれていた。
たぶん、彼女の出演する番組のタイトルかなにかだったと思う。
かわいそう! と子どものわたしは思った。
みんなが見てるテレビで、こんなことさせられて、女の子なのにどんなに恥ずかしいだろう、と。
けれど次に映った画面で、その女の人は、「してやったり! どうよ!?」というように、すごく可愛くいたずらっぽく、笑っていた。
その場にいた他の人も、あっけにとられていた男性タレントも、「びっくりしたなあ」と言いながらみんな笑って彼女を歓迎した。
よくわからないけれど、「自分はなにか間違った。ここには自分のまだ知らない何かがある」と思った。
この人はかわいそうじゃない。
その辺を歩いている女の子がスカートをめくられることとは全く違う、彼女のおしりはその意志に基づいて、仕事として披露されているんだ、それはとてもきれいで、みんなの憧れで、彼女の誇りでもあるんだ。
かわいそうだ、なんて、失礼なんじゃないか。
そういうことを、言葉ではっきりと理解なんかしていなかったけれど、でもたしかに考えてたどり着いた。
栗色の長い髪を揺らして、とてもチャーミングに微笑んだその女性は、飯島愛という人だった。
あのとき幼いわたしが気づいたことは、大切なことだったと今思っている。
それは、あの笑顔のおかげだった。
愛ちゃん、
わたしのおしりはあなたみたいにきれいじゃ全然ないけれど、
それでも「意志に基づいて仕事として披露するもの」に、少しだけ、なったよ。
もちろん、恥ずかしいなんて、思っていないよ。
愛ちゃんがいたから、わたしも笑っていられる。忘れないよ。
何も変わらないけれど新しい年が来るよ。
ありがとう。おやすみなさい。
22才の笑顔
- 2008-12-18 (木)
- 王子様についた嘘
そんなことを言ってたら本当に来ちゃったじゃんか。
本物の、
22才のお客さんが。
20代前半なんて、月に1~2人くらいしか出会わない(これは店によって、また個人によってかなり変わるポイントだと思う)。
わたしが緊張するのは、いかつい外見の男よりヨチヨチの若い男の子だ。
だって、下手なこと言ったりやったりしたら、一生気にしたり、誤解したり、知らないうちに傷つけたりしちゃうんじゃないかって気が気じゃないから。
もう、ひと目見たときからどーー考えたって若い。わたしより若い。
あああ緊張する!!!!!
部屋のマンガのセレクトも若いし、置いてあるもののセンスも若いし、誰かにもらったんであろう小さなクマのぬいぐるみとかハンガーにかかってる洋服とか、すべてが見事に「ハタチそこそこの男子の部屋」だった。
若くて、それなりの容姿を持ったお客の中には、扱いにくいケースもある。
「どうせ普段臭くて汚いオヤジばかり相手にしてるんだから、オレとヤレるなんてありがたいでしょ」なんていうスタンスで来られたら厄介だ。
でも、この男の子は、なかなか可愛らしい顔立ちをしていて決してモテないタイプではなさそうだったけれど、そんな勘違いもしていなかった。
あいさつして、お金をいただいて、責任の重さが胸に迫った。
40代の3万円と、20代前半の3万円の違いを思ってしまったから。
もちろん、相手が望んでその金額でサービスを受けることを依頼しているのだから、そんなことをわたしたちが気にする必要はこれっぽっちもない。
むしろ、お客の懐事情まであれこれ推測するのは失礼だし、どんなお客様からいただくお金もすべて等しい価値を持つという感覚を持つべきなのだろうと思う。
でも、重たかった。
無防備にテーブルの上に置かれたPORTER(そう、PORTERなんだよ!!マジックテープなのよ!!)の財布から、年輪のないすべすべとした指で取り出され、「よろしくお願いします」と差し出された3枚の紙幣は、重たかった。
ありがとうございます、と収めて、並んで座る。
彼は何も話さなくて、目が合うと恥ずかしそうな笑顔で下を向いてしまった。
「こういうのって、あんまり……呼んだりしないんですか?」
こんな初めの段階で長い沈黙を作るのはよくない。普通ならどのくらい風俗遊びするんデスカなんて野暮ったい質問はめったにしないけど、今はとにかくコミュニケーションを取らなくちゃ、とわたしはあせっていた。
「もう、あの、全然。こういうの、初めてで、わかんなくて。」
下を向いたままで、ちょっと微笑んだ顔のままで、答えてくれた。
ぎこちない会話をもう少しして、わたしが言った。そりゃもう、つとめて笑顔で。
「こんな若い人のおうち来たことないから、すごい緊張しちゃいます……だって、あの、20代前半、とか、ですよね?」
「はい。22才です。」
やっぱり若いよ!! とショックを受け、でも次の瞬間に間髪いれずに
「そうなんだ、じゃあ一緒だね、わたしも今22なの。」とにっこり言ってしまった自分の図太さよ! くらくらした(だけど同い年ならそこでそう言うのが自然だよね? と脳みそが忙しく働いた結果なのだ)。
きかないでほしい、ひとつめのこと
- 2008-12-04 (木)
- 人魚のすみか
ときどき、自分の本当の年齢が、わからなくなる。
いくつ?
もちろん、一瞬で思い出す。
でも、なんだか感覚としてはもっとコドモ……5才くらいは下のように感じてしまう。
背が低くて化粧が薄いせいで、見た目だけだとそのくらいに思われることばかり、ということだけではなくて、どう考えても自分が実年齢に見合う大人だとは思えない。
わたしたちは、源氏名とセットで「源氏年齢」を持っている。今のお店は本当に若い子も多いから、たぶん平均でマイナス2~3才、じゃないかな。
ハタチまではたいていそのまま出ているし、いちばん年上のコは30ちょっとで、店ではたぶん25才くらいだ。
吉原のお姉さんなら10コ下に言うことも全然めずらしくないみたい。
たまに、お客さんにしつこく「本当はいくつなの~?」と問いただされることがある。特に制服を着るようなイメクラにいた時期は、けっこう、あった。
仕方がないので、「本当は23なんだけど、お店から21ってことにさせてくれって言われたの」とかなんとか言っておく(あなただけ特別に教えちゃうんだからね?的な口調が大切ですね)と、たいていは満足げになるほどと頷いて、おとなしくなる。
そして「ねえねえ~それじゃあ俺っていくつに見えるぅ~?」と大迷惑クイズが始まることも少なくないけど。
年齢なんて20でも25でも同じじゃないか、と思う人だっていっぱいいるって分かってる。
だけど、ズラリと並んだ女の子のプロフィールを前にして今夜の相手を慎重に吟味しているときには、「22でも27でも同じじゃないか」なんてとても思わない場合がある、というのも、知っている。
1つ2つの歳にこだわるなんてばかげている、ということもちゃんと分かっている。
だけど、「25過ぎたらオンナに価値なんてないもんね、4と5の差は大きいよ、君もせいぜい若いうちに遊びなさい」と本気で話す客をこの目で見たことも、ある。
高級店のあの子
- 2008-11-08 (土)
- 波のあわ
抱かれたくない男ランカーのうち、本当にダメな人なんてそれほどいないはずだ。
という話のはずが
抱かれたい男ランキングの中にだって、無理な人は何人もいるだろう?
という話になり
いやむしろ抱かれたいメンバーの方がキツいかもしんない、とか言ったら引く? ヘンかしら?
とおそるおそる言ったらば
「否。私もそうだ!!」
と力強く微笑んでくれた田中課長とデートをしました。
田中さんとのおしゃべりはいつも、たのしい、という以上の心地よさや安心感をもらえる貴重な時間。「そうそう、そうだよね」がとても濃いです。
とにかくたくさんおしゃべりしたのに、ガールズトークっていつもそうなんだけれど盛り上がるほど後で思い出そうとしてもちょこっとずつのカケラしか出てこないのね。
もっといろいろ話したはずなんだけどなー、って。
しかも、くっきりと思い出せることはすごくどうでもいいことだったり。
今回は夜の銀座で「自分のブサイクに責任を持っているブサイクはカッコイイのです!!」と力強く宣言したことのみよく覚えています。誰のことだったのか。たぶん岩尾のんちゃんかザブングル加藤だな。好きだよ加藤。かわいいよ加藤。しかし彼女がいるらしいのでおいらは身を引く。
後日、職場の店長(甘いもの好き)に「ピエール・マルコリーニ行ったもんねおいしかったもんね」とプチ自慢したら
「げー! それってやっぱ男におごらせたんでしょ!!いーなーいーなー」だって。女の子と行ったからちゃんと払ったよ、と言ったらだいぶ驚いていました。失敬な。
彼いわく「ひとつ1680円の銀座のパフェなんて、90分5万円の青山のデリヘルに匹敵するキヨミズ度」「失敗したら立ち直れない」だそうです。
バカですね。しかしかわいい店長です。
元カレの家を探す夜
- 2008-11-03 (月)
- 波のあわ
2ヶ月くらい前に写真指名で会ってから、わりと頻繁に呼んでくれるようになったお客さんがいる。
その人の家に行くために必ず通る道路があって、最初のときは気がつかなかったけれど、2回目に「あ、ここ、来たことある!」とわかった。
ずっとずっと前につきあっていた男の子の家の、すぐそばを通っていたのだ。
わたしが初めて、とても深く付き合った相手。
3年前までは連絡が取れていた。
この世界に入るずっと前のこと。わたしはまだ10代で、ちょっとお堅い会社に勤めていて、本当にまじめなただの女の子だった。
彼は10才年上。ミュージシャンになりたいフリーターだった。
「男ってなんでこうなの……」というような今ではおなじみの失望を、初めて味わわされた相手でもある。
彼は無邪気で、ピュアで、かわいいところのある人だった。だけど、まだ半分子どもだったわたしには、その幼さを受け入れられなくて、ぶつかってぶつかって、泣いて別れた。
後に残ったのは、なんで? という疑問ばかりだった。
いちばん重く残っているのは、もう別れようと話が決まったあとで、おそらく彼は軽い気持ちで口にした言葉だ。
──コユリは身体が小さいし男を知らないから、あそこも小さくていいだろうと思ったのに、それほどでもなかった。
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