blog: 甘い手であそぶ人魚
銀座線の新婚さん
- 2008-08-10 (日)
- 波のあわ
家に帰る電車の中で、新婚さんを見た。
たぶん、新婚さんだったと思う。
ひとつあいた席を一度ゆずり合ってから座った彼女が、荷物を自分のひざに置くようにと笑顔で彼に催促する感じとか、おそろいのリングをかち、かち、と言わせながらたのしそうに指をからませる感じとか、とにかく「ほやほや」というものがそこにはっきりとしていた。
ふたりは夏休みにハワイ旅行へ出かけるらしく、そのプランについてあれもしたいね、これもしたいね、とおしゃべりしていた。少し年上のようにも見える彼女の方が、「そうだ、わたしハワイに行ったらABCストアーでお買い物するのがとっても楽しみなの!!よけいなものまでたくさん買い込んでしまったら、止めてね?」とにっこり言ったとき、彼はきょとん、としてこうたずねた。
「ええっどうして、靴を買うの? しかも、たくさん?」
もちろんわたしは「彼は日本の靴屋さんのABCマートと勘違いしているのだ」と分かって、かわいい間違いだなあと思ったけれど、ほやほやの彼女から見たらとても間抜けで頼りない、がっかりするに十分な失言だったのではないかと気になった。彼女の次の言葉がおそらく失望に満ちたものになりそうで、ふたりのハワイ熱を案じるような気持ちになってしまったところで、彼女はまったく調子を変えずにこたえた。
「うふふ、ハワイでは、ABCストアーっていうなんでも屋さんがあるんですって。そういえば、日本の靴屋さんと同じ名前ね!!」
それを聞いた彼のほうが、すぐに自分の間違いに気づいたようだった。
「しまった、ABC”ストアー”か。ごめんごめん、そうだよね。僕はこのままじゃ人前でとんだ恥をかくところだったなあ、もう覚えたぞ」
彼女に無知なところを知られてもそれは彼にとってまったく恥ずかしいことではないってこと、
彼女が彼がなぜ勘違いしていたなどと言うのかまだわからないこと。
とにかくふたりは、「ほやほや」していた。まぶしかった。
ふたりがこれから帰る部屋はきっと小ぎれいであたたかくて、友だちには「似たもの夫婦」とからかわれたりしていて、だけどもれなくみんなにうらやましがられていて、ハワイ旅行はひと事件起こりながらも楽しいものになるのだろうなあ、奥さんはこの笑顔でみんなにおみやげを配るのだろうなあ、と思ったら、なんだかとても、めったにないすてきな、人がみんなほしがるようなものを間近でみているような気分になった。
すえながく、おしあわせに。
口の中で言ってから、大きな駅で電車を降りた。
新婚さんはふたり並んで腰かけて、それだけでこの上ない幸せだというふうに、手をつないで寄り添っていた。
風俗嬢と愛妻家 (1) 先生の日記
- 2008-07-14 (月)
- 王子様についた嘘
もうずっと前に、時々来てくれていたお客さん。
まじめそうで、控えめで、背中に「堅実な人生」って書いてありそうな雰囲気のひと。
いつもスーツでやってきて、靴もきれいに磨いてあった。机の上に重そうなカバンと高そうな時計と華奢なメガネを順番に置くしぐさが、なんとなくエッチな感じがしてた。教室に置いてあるような、生徒用の学校机。
セーラー服を着たわたしが、まっすぐ見つめながらシャツのボタンをはずしてあげようとすると、「そんなのされたことないよ」としきりに顔を斜めに背けては恥ずかしがっていた。
穏やかで、プレイでも無理な要求なんかはしてこなかったし、いわゆる「お客さんとして大好きなお客さん」だったその人。
向こうもわたしを気に入ってくれて、あるとき名刺をくれた。
現役風俗嬢が完全無料で貴方のPCに!!
- 2008-07-03 (木)
- 波のあわ
ごめん。
ちょっと言ってみたかっただけなんだ。
スパムメールって読みますか。や、真剣にじゃなくても。
昔勤めていたのお店でメールマガジンを発行する係だったスタッフさんが、「ゴミ箱へ直行させず、思わずクリックして本文を開けてしまう件名」を編み出すべく、参考にエロいスパムを収集しては熱心に読んでいました。
メールソフトが振り分けてくれたゴミ箱フォルダに、まちがってスパムじゃないメールが紛れていないかざっとチェックしてから全削除するとき、ちらりと彼を思い出して懐かしくなります。元気かな。なっちゃん。
女の子の名前で誘ってたり(ミキですアドレス変えました☆、とか)、事務的だったり(Re:お問い合わせの件、とか)、超直球だったり(無修正決定版!とか)いろいろあるのね。
出会い系サイト、の「系」ってなんなんだろ。
出会いサイトでもいいんじゃないのか。違うのか。
で、たまーになんだけど、あまりにもひどくて笑っちゃって、腹も立たないようなのってありませんか。
「貴方の童貞を高額オークション!」
「どうしよう宝くじ当たっちゃった 母より」
「牛丼うまい、超マジうまい」
……みたいな。
1つ目はまずもうありえないし(童貞前提ってすごいよな)、2つ目はもうエロから遠く離れちゃったし、最後のなんてもう、よかったね! としか言えないし。
…牛丼うまい。件名で言うほどうまい。だって超マジだもの。
とてもいいことだと思います。おなかいっぱい食べるといい。遠慮すんな、俺のおごりだ。
(本文はオーソドックスな出会い系サイトの宣伝でした)
わたしはハーゲンダッツの抹茶黒みつが超マジうまいです。
風俗行くのは浮気になるのか
- 2008-06-25 (水)
- 人魚のすみか
風俗は浮気になるのか?
あまり話し合いたい議題ではないけれど、時々聞かれちゃう……お客さんに。
後ろめたいんなら来るなよ! と思うけど、よっぽど態度の悪い、できれば気に入られたくないような相手でない限りは笑顔で受け流してる、そんなことどーだっていいじゃないですかぁー、わかんないもーん、みたいな顔して。
(気に入られたくない相手だと「いちお民法上は不貞行為に入るとかで、離婚できなくもないらしいっスよー」とかなんとかさらっと言ったりしまふ)
浮気かどうかなんてそんなもの、「された人」以外の誰が決められるっていうんだ。
個人的には、結婚しているお客さんを内心軽蔑したりというのはない。まったく、ない。
日々の業務が裏切り行為の片棒担いでるとも思っていないし、こんなにお客に妻帯者が多いってことは結局男は浮気する生き物なのね、あーヤダヤダ、とかもない。
「彼氏が風俗行ってたらどうする~?」って意地悪く聞いてくる人もいるけど(彼氏なんていませんよ~と返事するけど)、それも即座に「絶対やだ!」って思えないのです。
行ってもいいし、行かなくてもいい。もし万が一実際にそういうことが発覚してみてからやっぱり嫌だと思ったとしても、行くなとは言わないだろう。
それはわたし自身が風俗嬢だからそんなずうずうしいこと言えない、じゃなく。
きっと世間一般の標準からすると、わたしのほうが少数派なのね、とは思ってて。
「百歩譲って行ってもいいけど指名はしないでほしい」とかね。これちょっとわかる。やきもちが生まれるとややこしいもんね。
この世界に入る前は、どう思っていたんだろ。
それが知りたいけど、今となってはもうどーやっても、思い出せないのでした。
だって、わたしがどんなに彼氏を愛していても、わたしの胸はBカップのままですからね。彼氏がどんなに愛してくれても、DとかEにはなりませんからね(揉まれれば大きくなるとか言ってる人は納得いく説明をしてもらいたい)。
死ぬまで他のおっぱいに興味を持つな、なんて言えないよ。
あ、でも、遊んだ女の子がすごい巨乳ちゃんで、いかに楽しかったかを延々と語られたら、そして残念そうにチラ見とかされたらその時は怒るかもしれません。
いや、絶対に怒るね。あーもう離婚だ離婚。ハンコ持って来やがればーかばーか。
まいごのまいごのこねこちゃん
- 2008-06-13 (金)
- 波のあわ
ちょっとでっかいちょっときれいなホテルに呼ばれ、ひたすら部屋番号をつぶやきながらどっちを向いても同じ色の壁をした廊下をうろうろして、あ、行き止まり? とかなりつつ無事にたどり着いてホッとして、
帰りに2倍うろうろするんだよ。
いつかやっぱり軽く迷ったときに、同じフロアでちょうどお部屋に向かうところだった同業の女の子(わたしたちにはすぐ分かるものなのです)が、エレベーターの方向を(ここ行って、左だよ)と優しく指さしてくれたことがあって。
どうか彼女を待っている客が、紳士的であるようにと祈ったものでした。

