#05 つるつる
毛深い人を、いいな、と思うようになったのは風俗嬢になってからだと思う。
もじゃもじゃした濃い体毛になぜか粗暴で怖いようなイメージを持っていたけれど、ここにいるとそんな人にはいくらでも会う。もじゃもじゃにもさまざまに個性があって、その毛並みはひとりひとり違うということを知るうちに、怖くなくなった。皮膚の上でゆるいカーブを描いて流れを作るさまを指でなぞっていると、それはこの上なく可愛い模様にも見えてくる。
その人もわりと毛深くて、筋肉質な身体は柔らかく長い毛に覆われていた。でも太股の内側、正面からでは見えないそのあたりは、ほとんどなにも生えていないのだった。
「俺さー、昔サッカーやってたのね。けっこうちゃんと。んでちょうど毛がちゃんと生えてくるころじゃん? 俺の推測ではそのせいでここだけツルッツルなんじゃないかって」
シャワールームで泡にまみれながらその部分をなでていた時だ。
「こすれて毛がだめになっちゃったってこと!? ほんとにー?」
あたしが笑うと彼も笑って、やっぱ違うか、と首をかしげた。
「それで毛根まで死ぬってこたないか、やっぱ」
「あるのかもよ、そういうことも」
「こっからいきなりつるつるでちょっと嫌なんだよね」
「なんでー、かわいいのに」
「いや、生えるなら生えろって感じだよー」
……じゃあ、あたし似たような毛の人に会ったら教えるよ。そう言うと、ちょっとうれしそうに、よし頼んだ、と言った。
それからどのくらい後だったかは分からない。「似たような毛の人」は確かにまた、あたしの客にいた。ふとあの時の彼を思い出してなつかしく思い、軽い気持ちでなにかスポーツとかされてましたか、と、それは脚の筋肉をほめたつもりで口にした。
「あの、実は僕、昔本気でJリーグ目指してたんです、恥ずかしいですけど」
みつけちゃったよ、ねえ、とおどろき、だけどもうあの客と二度と会うことはないし、顔だって覚えてはいないのだ。だからあたしは、Jリーグなんてすごい、と言って、はにかむ男のその狭く愛しいつるつるの場所に頬ずりをした。遠くなったあのときと、おんなじように。
